契約書の【期限の利益の喪失】とは?
契約書の【期限の利益の喪失】とは?
契約書の【期限の利益の喪失】とは、債務者が契約上の義務を履行しない場合などに、本来の履行期限よりも早く全ての債務を履行しなければならないという条項です。
簡単に言うと、**「約束を守らなかったら、すぐに全額払ってね!」**という約束です。
例えば、売買契約で代金の支払期限を3ヶ月後に定めた場合、通常であれば3ヶ月後に支払わなければ違約金が発生するだけですが、期限の利益喪失条項が設けられていると、1回目の支払期限を過ぎた時点で全額の支払義務が発生する可能性があります。
この条項は、主に以下の目的で設けられます。
- 債権回収を円滑にする
- 債務者のモラルハザードを防ぐ
- 契約関係を健全に維持する
期限の利益の喪失事由
期限の利益喪失条項では、どのような場合に期限の利益を失うのかを具体的に定めておくことが重要です。民法上定められている主な事由は以下のとおりです。
- 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき
- 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき
- 債務者が担保を提供する義務を負う場合において、これを提供しないとき
上記に加え、契約書ごとに様々な事由を定めることが可能です。
例文
以下は、期限の利益喪失条項の例文です。
第○条 期限の利益の喪失
- 買受人は、以下のいずれかに該当する場合、期限の利益を失い、売渡人は、代金の全額を直ちに請求することができる。
ア. 買受人が代金の支払を遅滞したとき
イ. 買受人が破産手続開始の決定を受けたとき
ウ. 買受人が詐害行為をしたとき- 前項の場合において、売渡人は、買受人に対して書面をもって期限の利益喪失を通知するものとする。
注意点
期限の利益喪失条項は、債権者にとって強力な権利となりますが、濫用には注意が必要です。あまりにも厳しい内容の条項を設けると、裁判所によって無効とされる可能性もあります。
条項を設ける際には、法令上の制限や契約の目的・内容などを考慮し、適正な内容となるよう契約書の専門家に相談することをおすすめします。